2026年11月2日 ・ 読了目安 7 分
介護の契約書で、連帯保証人に「極度額」は必要?|民法465条の2と国の指針
契約書に個人の連帯保証人の欄があり、保証する範囲が毎月発生する利用料のように金額が決まっていない債務に及ぶときは、保証する金額の上限(極度額)を定めなければ、その保証契約は効力を生じません(民法第465条の2第2項)。国の有料老人ホームの指導指針は、「入居者の債務について、個人の根保証契約を行う場合は、極度額の設定を含み民法の規定に従うこと」と書いています。一方で、身元保証人等がいないことは、サービス提供を拒否する正当な理由には該当しないとする国の通知もあります。 この記事では、条文と、国・和歌山県・全国有料老人ホーム協会の原文で確認できた範囲に絞って整理します。
介護の契約書の連帯保証人に、極度額は必要ですか?
民法の条文(e-Gov法令検索で原文を確認)で、保証契約と極度額について書かれていることを並べます。
| 条文 | 書かれていること |
|---|---|
| 第446条第2項 | 保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない |
| 第446条第3項 | 保証契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する |
| 第465条の2第1項 | 一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(根保証契約)で、保証人が法人でないもの(個人根保証契約)の保証人は、主たる債務の元本、利息、違約金、損害賠償など、保証債務について約定された違約金・損害賠償の額を含めた全部に係る極度額を限度として、履行の責任を負う |
| 第465条の2第2項 | 個人根保証契約は、極度額を定めなければ、その効力を生じない |
| 第465条の2第3項 | 第446条第2項及び第3項の規定は、個人根保証契約における極度額の定めについて準用する(極度額の定めも、書面か電磁的記録でしなければならない) |
条文の言い方を、契約書の言葉に直すと次のようになります。保証人が個人で、保証する範囲が「一定の範囲に属する不特定の債務」(契約した時点では、いくら発生するか決まっていない債務)であれば、極度額が書かれていない保証契約は効力を生じません。 保証人が法人(保証会社など)のときは、条文の「保証人が法人でないもの」に当たらないため、この規定の対象外です。
和歌山県の令和元年度の集団指導資料(有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅)は、「令和2年4月1日の民法改正法施行後」の取扱いとして、この規定を説明しています。 施行日より前に結んだ契約の扱いは、この記事では扱いません。
極度額は「月額利用料の6か月分」と書くだけで足りますか?
全国有料老人ホーム協会は、運営法人向けの情報(2025年8月15日付)の中で、有料老人ホームの入居契約書で連帯保証人の極度額が「月額利用料の6か月分」とだけ書かれていた場合の相談事例を取り上げています。 協会の説明を、書き方ごとに並べます。
| 契約書の書き方 | 協会の説明 |
|---|---|
| 「極度額:月額利用料の6か月分」とだけ書かれ、具体的にいくらかが入居契約書から明確に分からない | その保証契約の条項部分は無効となる。民法第465条の2が、個人根保証契約には極度額(保証上限額)の明示を求めているため |
| 入居契約書に月額利用料がたとえば「200,000円」と具体的に書かれ、その6か月分として1,200,000円と計算できる | 極度額が明確であると認められ、有効な契約とされる可能性がある |
協会は同じ説明の中で、「月額利用料の6か月分」という表現だけでは、将来的に利用料が変更される可能性があるため、極度額が契約時点で確定しておらず、法律上の要件を満たしていないとされる、とも書いています。 これから入居を検討する方には、「入居契約書等で金額が明確になっていることを確認してから、契約を締結してください」と案内しています。
国の指針や自治体は、極度額をどう書いていますか?
厚生労働省の「有料老人ホーム設置運営標準指導指針」の「12 契約内容等」の「(2) 契約内容」に、次の一文があります。
七 入居者の債務について、個人の根保証契約を行う場合は、極度額の設定を含み民法の規定に従うこと。
和歌山県の集団指導資料は、連帯保証人を付ける賃貸借契約を例に、「個人が保証人になる根保証契約については、保証人が支払いの責任を負う金額の上限となる『極度額』を定めなければ、保証契約は無効となります」と書き、「この極度額は書面等により当事者間の合意で定める必要があります」と続けています。 記載例として、次の条文を示しています。
第○条(連帯保証) 丙(連帯保証人)は、甲(賃貸人)に対し、乙(賃借人)が本契約上負担する一切の債務を極度額○○○万円の範囲内で連帯して保証する。
指針も和歌山県の資料も、対象は有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅です。 居宅サービスの運営基準(指定居宅サービス等の運営基準・平成11年厚生省令第37号)の条文を「保証」「身元」の語で検索したところ、該当は0件でした。 条文に保証人を求める規定が書かれていないことと、契約書で保証人の欄を設けた場合の民法の規律は、別の話です。
連帯保証人や身元保証人がいないことを理由に、利用を断れますか?
国の通知と、運営基準の条文で確認できたことを並べます。
| 出所 | 書かれていること |
|---|---|
| 厚生労働省老健局の通知(令和7年7月30日 老高発0730第1号・老認発0730第1号。平成30年8月30日の通知の一部改正) | 「介護保険施設に関する法令上は身元保証人等を求める規定はなく、各施設の基準省令においても、正当な理由なくサービスの提供を拒否することはできないこととされており、入院・入所希望者に身元保証人等がいないことは、サービス提供を拒否する正当な理由には該当しない」。都道府県等には、身元保証人等がいないことのみを理由に入所を拒むことや退所を求めることのないよう、指導・監督を求めている |
| 同じ通知が引く平成29年度の調査 | 介護施設への入所(入院・入居)時に本人以外の署名を求めている施設は95.9%。施設側が求める機能・役割は、本人の責任範囲を超えた場合の滞納リスクの回避と、本人の能力が衰えた場合の身上保護・財産管理に大別される |
| 運営基準 第9条(訪問介護の例) | 指定訪問介護事業者は、正当な理由なく指定訪問介護の提供を拒んではならない |
通知が名指ししているのは、介護保険施設です。訪問介護などの居宅サービスについて、同じ内容を書いた通知は、この記事では確認できていません。 運営基準の条文は、提供拒否を「正当な理由なく」禁じていて、保証人がいないことが正当な理由になるかどうかは書かれていません。 個別の場合は、事業所を指定した自治体に確認します。
保証人の署名や極度額の記入を、電子でしてもよいですか?
民法は、保証契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、書面によってされたものとみなす(第446条第3項)と定めています。 極度額の定めにも、同じ扱いが準用されます(第465条の2第3項)。 どの方式の電子署名や同意が、この要件を満たすかは、この記事では扱いません。 利用者本人が署名できないときの代筆と代理人は代筆と代理人の記事、重要事項説明書を電子で交付する場合は電子交付の記事で整理しています。
契約書の連帯保証人の欄について、事業所で点検することは?
条文と公的資料から読み取れる点検を、5つにまとめます。
- 1連帯保証人や身元引受人の欄がある様式は、保証人が個人か法人かと、保証する範囲を確認する。個人で、保証する範囲が将来の利用料のように決まっていない債務に及ぶなら、極度額が要ります。
- 2極度額が「○○円」と書かれているかを見る。「月額利用料の6か月分」だけの書き方は、契約書から金額が計算できるかを、全国有料老人ホーム協会の説明に沿って確かめます。
- 3様式を作った時期を確認する。極度額の規定は令和2年4月1日の民法改正法の施行後のものとして説明されています。保証人の欄が、それ以前の書き方のままになっていないかを見ます。
- 4保証人がいない人の申込みを、そのことだけで断っていないか見直す。国の通知は、介護保険施設について、身元保証人等がいないことは正当な理由に当たらないとしています。
- 5電子で保証人に署名してもらったあとの控えで、極度額が保証人の行に残っているか確かめる。極度額の定めも書面か電磁的記録でする必要があるため、署名後の控えに金額が出ているかを見ます。
トリカワスでは、連帯保証人の極度額をどう扱いますか?
トリカワスは、契約書・重要事項説明書・同意書を、PDF や Word のまま登録して使う電子サインのサービスです。 設定の「署名欄の役と文言」で、役ごとに「極度額を署名欄に記載する」にチェックできます。 チェックした役には、契約を作成するときに極度額(円)の入力欄が出て、署名ページのその方の行に「極度額 ○○円」と印字されます。 入力欄は空欄でも進められ、空欄のときは極度額の行は印字されません。金額を入れるかどうか、いくらにするかは、お使いの様式に合わせて事業所で決めます。 この記事は条文と公的資料で確認できた範囲で、個別の契約書の文言が有効かどうかを判断するものではありません。個別の契約書は、弁護士などの専門家にご相談ください。 月額は建物1棟あたり4,980円(税込)です。30日間無料。クレジットカードの登録は不要です。
出典・確認日
- ・e-Gov法令検索「民法」(明治29年法律第89号)第446条・第465条の2。2026年11月2日に取得して原文を確認
- ・e-Gov法令検索「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第37号)第9条。2026年11月2日に取得し、「保証」「身元」の語で条文を検索
- ・厚生労働省 老健局「市町村や地域包括支援センターにおける身元保証等高齢者サポート事業に関する相談への対応について」の一部改正(令和7年7月30日 老高発0730第1号・老認発0730第1号・介護保険最新情報 Vol.1409)。2026年11月2日に取得して原文を確認
- ・厚生労働省 老健局「市町村や地域包括支援センターにおける身元保証等高齢者サポート事業に関する相談への対応について」(平成30年8月30日 老高発0830第1号・老振発0830第2号)。2026年11月2日に取得して原文を確認
- ・厚生労働省「有料老人ホーム設置運営標準指導指針」(12 契約内容等 (2) 契約内容 七)。2026年11月2日に取得して原文を確認
- ・公益社団法人 全国有料老人ホーム協会「【契約・解約】有料老人ホームの入居契約における、連帯保証人の「極度額」(保証の上限額)の表記について」(運営法人向けの情報・2025年8月15日付)。2026年11月2日に取得して公開部分を確認
- ・和歌山県「令和元年度 介護保険サービス事業者等集団指導資料 有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅」(「極度額について」の項)。2026年11月2日に取得して原文を確認
本記事の制度に関する記述は 2026-11-02 時点で公開されている情報に基づきます。制度・様式は変わることがありますので、最新の内容は発出元と、指定を受けている都道府県・市町村でご確認ください。