2026年10月25日 ・ 読了目安 7 分
介護の契約書・重要事項説明書の保管期間は?|国の2年と自治体の5年
介護の契約書と重要事項説明書の保管期間は、国の基準(指定居宅サービス等の運営基準・平成11年厚生省令第37号)の条文(訪問介護と通所介護で確認)には書かれていません。同じ条文が「完結の日から2年間」の保存を定めているのは、サービス計画、提供したサービスの内容の記録、苦情や事故の記録などで、契約書と重要事項説明書はその一覧に入っていません。自治体は、条例で記録の保存を5年とするなど、国より長く定めていることがあります。 この記事では、条文と、京都府・横浜市・川崎市・大阪市の原文で確認できた範囲に絞って整理します。
契約書・重要事項説明書の保管期間は、国の基準でどう決まっていますか?
訪問介護と通所介護を例に、運営基準の「記録の整備」の条文で確認できたことを並べます。
| 条文 | 書かれていること |
|---|---|
| 第39条第1項(訪問介護) | 従業者、設備、備品及び会計に関する諸記録を整備しておかなければならない。保存の年数は書かれていない |
| 第39条第2項(訪問介護) | 利用者に対するサービスの提供に関する次の記録を整備し、その完結の日から2年間保存しなければならない。①訪問介護計画 ②提供した具体的なサービスの内容等の記録 ③身体的拘束等の態様及び時間、その際の利用者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由の記録 ④市町村への通知に係る記録 ⑤苦情の内容等の記録 ⑥事故の状況及び事故に際して採った処置についての記録 |
| 第104条の4第2項(通所介護) | 同じ形で、通所介護計画、サービスの内容等の記録、身体的拘束等の記録、市町村への通知に係る記録、苦情の記録、事故の記録を、完結の日から2年間保存しなければならない |
| 第8条(重要事項の説明と同意) | 提供の開始に際し、あらかじめ、重要事項を記した文書を交付して説明を行い、同意を得なければならない。保存の期間や、保存するかどうかは書かれていない |
2年の保存が定められているのは、第2項に並んだ記録です。契約書と重要事項説明書は、この一覧にも、第8条にも出てきません。 川崎市が公開している「記録の整備・保存」(PDF)も、訪問介護と特別養護老人ホーム(指定介護老人福祉施設)の記録を一覧にしていますが、どちらにも契約書は挙がっていません。 第1項の「従業者、設備、備品及び会計に関する諸記録」の例として川崎市が挙げているのは、従業者の資格証の写し、雇用契約書、出勤簿・タイムカード、介護給付費請求書、加算・減算の根拠書類で、利用契約書は入っていません。
保存期間の決まりが条文にないことと、運営指導で提示を求められることは、別の話です。 運営指導で契約まわりとして確認される文書は、運営指導の確認項目の記事で整理しています。
保存期間の「完結の日」とは、いつのことですか?
2年や5年を数え始める日は、条文では「その完結の日」です。横浜市の「運営の手引き 居宅介護支援」(令和8年7月版)は、記録の整備の項で次のように書いています。
「その完結の日」とは、個々の利用者につき、契約終了(契約の解約・解除、他の施設への入所、利用者の死亡、利用者の自立等)により一連のサービス提供が終了した日を指すものとする。
数え始めは、自治体によって違います。大阪市は、居宅介護支援等の条例の独自基準として、「サービスを提供した日から5年間」の保存を義務付けています(国の省令は、完結の日から2年間)。 川崎市は、記録の種類ごとに始期を示しています。計画は計画期間の最終月の翌々々月の1日、サービスの内容等の記録はサービスを提供した月の翌々々月の1日、それ以外は記録を作成した月の翌月の1日です。
保存期間は、自治体によって違いますか?
違います。国の省令で定められていた指定基準は、法改正により、指定権者(事業所を指定する自治体)が独自に条例で定めることとされました(大阪市の説明)。 記録の保存の定めを、確認できた4つの自治体で比べます。京都府と横浜市は訪問介護の条例の条文、川崎市と大阪市は自治体が公開している説明です。
| 自治体 | 保存の年数と数え始め | 原文で確認できたこと |
|---|---|---|
| 京都府(条例第27号 第42条) | 完結の日から2年間 | 第2項で「規則で定める記録を整備し、その完結の日から2年間保存」と定めている(国の省令と同じ年数) |
| 横浜市(条例第76号 第42条) | 完結の日から5年間と2年間が混在 | 第1項は勤務の体制の記録と、国民健康保険団体連合会に提出した請求の写しを5年。第2項は、訪問介護計画・身体的拘束等の記録・市町村への通知の記録・苦情の記録・事故の記録を2年、提供したサービスの内容等の記録を5年 |
| 川崎市(「記録の整備・保存」) | 5年間(始期は記録の種類で異なる) | 「厚生労働省令では2年間と定められていますが、本市指定基準(条例)においては、5年と定めています」と書いている |
| 大阪市(居宅介護支援等の独自基準) | サービスを提供した日から5年間 | サービスの提供に関する記録について、「サービスを提供した日から5年間の保存を義務付け」と書き、厚生労働省令は完結の日から2年間と並記している |
同じ「記録」でも、年数も数え始めも、自治体と記録の種類で変わります。 確認できた4つの自治体の定めが、他の自治体にそのまま当てはまるとは限りません。事業所を指定した自治体の条例と、その自治体の手引きに従います。
契約書・重要事項説明書に、記録の保存期間を書いている場合の注意は?
運営規程や契約書、重要事項説明書の中に、記録の保存期間を書いている事業所もあります。 川崎市は、「事業所の運営規程や契約書・重要事項説明書において、記録の保存期間を5年未満としている場合は、速やかに、記録の保存期間を5年又はそれ以上に改めてください」と書いています。 運営規程の変更が記録の保存期間のみであれば、市への届出は不要としています。
条例の年数が改まると、書類に書いた年数との差が出ることがあります。 年数を書いている書類は、条例の年数と合っているかを見直す対象に入れておきます。
契約書・重要事項説明書は、電子で保存してもよいですか?
省令第217条第1項は、書面で行うことが規定されている、または想定されるもの(作成、保存その他これらに類するもの)は、書面に代えて、その書面に係る電磁的記録により行うことができる、と定めています。 被保険者証の確認(第11条第1項)などは、この規定の対象から除かれています。 川崎市の「記録の整備・保存」も、「記録の保存にあたっては、電子文書による保存も可能です」と書いています。
契約書や重要事項説明書を電子で交付し、同意を得る場合の承諾の扱いは、第8条第2項から第6項と、第217条第2項に書かれています。 詳しくは重要事項説明書の電子交付の記事で整理しています。
契約書・重要事項説明書の保管について、事業所で点検することは?
条文と自治体の原文から読み取れる点検を、5つにまとめます。
- 1事業所を指定した自治体の条例で、年数と数え始めを確認する。国の省令は完結の日から2年間ですが、5年とする自治体も、サービスを提供した日から数える自治体もあります。
- 2運営規程・重要事項説明書・契約書に保存期間を書いている場合は、条例の年数と合っているか見る。川崎市は、5年未満の記載を5年以上に改めるよう求めています。
- 3利用者ごとに、契約が終わった日が分かるようにしておく。「完結の日」は契約終了により一連のサービス提供が終了した日とする手引きがあります。数え始めの日付が記録から追えるようにします。
- 4電子で保存する文書は、利用者名や締結日で探して開けるか確かめる。運営指導では、電子で管理している文書は画面上で確認するものとされています(運営指導の記事で整理しています)。
- 5条文に年数がない契約書・重要事項説明書の扱いは、指定した自治体に確認して決める。川崎市は、損害賠償請求権など他の法令も踏まえて、各事業所で記録を管理するよう書いています。
トリカワスでは、契約書・重要事項説明書の控えをどう扱いますか?
トリカワスは、契約書・重要事項説明書・同意書を、PDF や Word のまま登録して使う電子サインのサービスです。 事業所の控えは PDF で保管され、利用者名や締結日で探して開き、印刷できます。 保存の年数は、事業所を指定した自治体の条例によります。この記事は、条文と4つの自治体の原文で確認できた範囲です。 月額は建物1棟あたり4,980円(税込)です。30日間無料。クレジットカードの登録は不要です。
出典・確認日
- ・e-Gov法令検索「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第37号)第8条・第39条・第104条の4・第217条
- ・京都府「介護保険法に基づく指定居宅サービスの事業の人員等の基準等に関する条例」(平成24年京都府条例第27号)第42条。2026年10月25日に取得して原文を確認
- ・横浜市「横浜市指定居宅サービスの事業の人員、設備、運営等の基準に関する条例」(平成24年条例第76号)第42条。2026年10月25日に取得して原文を確認
- ・横浜市 健康福祉局 介護事業指導課「運営の手引き 居宅介護支援」令和8年7月版(記録の整備の項。2026年10月25日に取得して原文を確認)
- ・川崎市「記録の整備・保存」(介護事業所向けのPDF。2026年10月25日に取得して原文を確認)
- ・大阪市「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準等を定める条例の施行について」(大阪市独自基準の内容。2026年2月20日更新・2026年10月25日に取得して原文を確認)
本記事の制度に関する記述は 2026-10-25 時点で公開されている情報に基づきます。制度・様式は変わることがありますので、最新の内容は発出元と、指定を受けている都道府県・市町村でご確認ください。